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暗示をかけると「冷ご飯がおいしくなる」?



 前回の続きで、レジスタントスターチについてです。


 レジスタントスターチは「カロリーにならないから太らないし、血糖値も上げない。腸も元気にする」と評判になり、「冷ご飯に多い」こともよく知られるようになりました。

 ただ残念なことに、皆さん冷ご飯ではテンションが上がらないようです。

 

 「冷えたご飯はおいしくない」

 「炊き立てが一番おいしいに決まっている」

 「そもそも、冷ご飯ってほとんど食べたことがない」

 

 でも、食を極めた人たちが、冷ご飯を絶賛しているとしたら、どうでしょうか?

 暗示がかかって、「あれっ!冷ご飯意外といける。炊き立てよりいいかも」となるかもしれませんね。


 そこで一人目の食通さんですが、増上寺法主だった道重信教大僧正。モーニング娘。のリーダーだった道重さゆみさんのお祖父さんのそのまたお祖父さんの弟さんだそうです。

 そのくらい昔の人ですが、冷ご飯へのこだわりをこんなふうに語っています。


 「飯じゃがね、これはつめたいに限る。たきたてのあたたかいのは、第一からだに悪いし、歯にもよくないし、おまけに飯の味もないのじゃ。本当の飯の味が知りたいなら、冬少しこごっている位の冷や飯へ水をかけて、ゆっくりゆっくり沢庵で食べてみることじゃ。この味は恐らくわしのような坊主でなくては知るまいが、うまいものじゃ」


 道重上人から直接この言葉を聞いたのは、こちらも食通として知られた子母澤寛。『新選組始末記』、『勝海舟』、『座頭市物語』など、歴史小説を得意とした作家ですね。


 「この時にきいた、飯の味は冷飯が本物だということは間違いない。私は道重さんの話をきいて一体本当かどうかと、試してみたのが病みつきで、三十年来飯は冷やに限るとしている。寒中に冷飯へ水をかけて沢庵で、なんてところまでは行かないが、絶対熱い飯は喰わない。いや、喰えなくなってしまった。そのため朝など、女中さんが困ることもあるらしいが、少し硬目の冷飯に、その代りだしのよく利いた舌の焼けるようなうまい味噌汁、これは私の一番の好物で、ずっと今日までこれをやっている…」


 料理研究家だった父の丸元淑生も、冷ご飯派でした。


 「子母沢寛は、飯は冷に限ると書いているが、私も冷飯をおいしいと思って食べるようになってもう十〇年以上になる。

 絶対熱い飯は喰わないという域ではないけれども、私も少し硬目の冷飯を噛みしめて食べるときに、すべての料理の味がよくわかる。食事が楽しいものになり満足する。それで知ったのは、お櫃がおいしくご飯を冷やす工夫であったことだ。お櫃の木がご飯から適度に水分を吸いとり、また適度に水分を戻して、べたつかず乾燥しすぎずの程よい弾力と粘度を保たせてくれるのである」


 冷ご飯はやや硬めの食感になるので、ガツガツかきこむようには食べられません。しっかり噛みしめて、ゆっくり味わうようになります。余計な調味料を使わずに素材の味をいかしたお料理と、相性がいいはずです。


 その対極にあるのが、甘辛の濃い味付けで必要以上にご飯が進む料理と、勢いよくかきこめるアツアツご飯の組み合わせですね。メタボが気になる方は、絶対避けたい食べ方です。


 冷ご飯をおいしく食べるための大切なポイントは、やはりおひつでしょう。道重上人や子母澤寛も、タッパーに入れて冷蔵庫にしまっておいた冷ご飯はお口に合わないと思います。


 おひつも最近はすっかり見かけなくなりましたが、押し入れの奥の方に眠っているかもしれませんね。探してみてはいかがでしょうか?


【by 平田ホリスティック教育財団理事 丸元康生】


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